検査関連
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便鮮血反応検査の意義について
日本の最新の死亡統計では、大腸がんが男性で第3位、女性で第1位と、過去20年間で2倍に増加しています。便鮮血検査はまさに大腸がんを見つけるための検査です。便鮮血検査を受けた人の約7%は陽性の結果となり、そのうち大腸がんの発見率は約0.3%と一見低値ですが、早期がんが75%と自覚症状のない人の病気の発見には決して悪い確率ではありません。実際、年間550万人の検診受診者から9,000例以上の大腸がんが発見されています。
大腸がん検診の有効性は、死亡リスクを60%以上低下させることがすでに証明されています。出典:国立がん研究センター『大腸がん検診を受けましょう』便鮮血陽性の2次検査で大腸鏡(下部内視鏡)を受診しても約半分の方には異常が指摘できませんが、一方、検査を受けなかった方の大腸がん死亡リスクが、検査を受け診断されたがんと比べて約5倍高まることを考えれば、検査を受ける意義は高いと考えます。
健康診断の判定基準では、潜血反応が2回とも陰性ならば正常、1回でも陽性ならば要精密検査とされています。2次検査の方法は全大腸内視鏡が推奨されています。
しかしながら、大腸がん発見のための便鮮血検査は万能のようですが、50%の早期がんと10%の進行大腸がんが見落とされます。また、痔でも陽性になることがあります。痔の出血と思い、実は大腸がんの出血であったことはよくあることです。結局、下部内視鏡検査が重要ということになり、便鮮血陽性の人はもちろん、血便を自覚した、便秘や下痢を繰り返す、便が細い、などの自覚症状があれば、検便の結果にかかわらず下部内視鏡検査を受けることが大切です。
内視鏡検査の意義について
国立がん研究センターのがん対策情報センターによる新しいがん統計では、日本人の女性の死因第1位は大腸がん、男性も数年後には第1位になると予測されています。元々、日本人に多い胃がんは死亡率は減少しているものの、数は横ばいです。定期的な上部内視鏡検査の受診が進み、早期で見つかることが多くなり、死亡率が減少しています。
これに比べて、大腸を診る下部内視鏡検査は、苦痛であるという印象が強く、胃などの上部内視鏡検査ほど受けられていません。胃がんも大腸がんも内視鏡検査でほとんど診断でき、早期がんならば手術をせず、内視鏡による治療でほぼ改善することができます。また、無症状でも偶然、がんがみつかることも少なくないため、定期的な内視鏡検査をお勧めします。
がん統計
2015年の死亡数が多い部位は順に
男性:1)肺 2)胃 3)大腸
女性:1)大腸 2)肺 3)胃
2015年の罹患数が多い部位は順に
男性:1)大腸 2)胃 3)肺
女性:1)乳房 2)大腸 3)胃
5年相対生存率
あるがんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標です。あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかで表します。100%に近いほど治療で生命を救えるがん、0%に近いほど治療で生命を救い難いがんであることを意味します。
部位別では、女性の乳房と子宮が70%以上で高く、胃、大腸、直腸、結腸が約60%~70%、肝臓と肺は20%前後で低い状況です。
苦痛の少ない、楽な内視鏡とは?鎮静剤?
消化管(食道・胃・大腸)のがんを正しく診断できる検査は内視鏡です。がんは早期発見されれば命を脅かすものではなく、かつ、治療も体への負担の少ない治療(内視鏡下切除や腹腔鏡手術など)が可能です。しかし患者さんにとって内視鏡は・・・。
内視鏡が嫌われる一番の理由は「苦痛」です。これこそががんの早期発見の最大の障害と考えられています。
上部内視鏡の苦痛は喉の奥を内視鏡が通る時に起こる反射、喉を管が通っていることによる異物感、胃が空気でふくらむことによる膨満感、内視鏡が胃の中を動き回ることによる異物感などからなります。上部内視鏡の苦痛は本質的には反射と異物感ですので、喉の敏感な人ですと、いろいろな方法を使って検査をしても苦痛を0にはできません。しかし「浅い麻酔」を使うことで検査が楽になります。また、内視鏡が細い程、患者さんは楽なことが多いので当クリニックでは細い上部内視鏡を導入しています。
これに対して下部内視鏡の苦痛はもっと直接的です。これは腸管が屈曲した部分を硬い内視鏡を無理に押し込んで通過させることにより起きます。これは「浅い麻酔」で消える性質のものでは基本的にはなく、強い麻酔で痛みをごまかすと腸の壁をやぶる事故につながります。従来、下部内視鏡はループをつくり内視鏡を押し込むようにして入れていました。これが苦しい原因です。現在では、内視鏡を直線的に挿入する「軸保持短縮法」と呼ばれている方法が推奨され、苦痛が少なく有効な方法です。しかし、「浅い麻酔」の併用は患者さんの不安などの緊張をとくため、当クリニックでは鎮静剤の併用と挿入技術でより楽で有効な検査を心掛けています。
「浅い麻酔」とは呼び掛けられれば答えられるが基本的に眠っていて、若干の健忘感(検査中や手術中をなんとなくしか覚えていない)がある状態が患者さんにとっては理想的であると考えます。その様な麻酔に使用されるのが鎮静剤です。鎮静剤による事故も報告されていますが、鎮静剤はその投与量、投与中・後の管理を正しく行えば危険なものではありません。当クリニックはoffice-based surgery(OBS)の専門クリニックとして、鎮静剤の投与は医療技術の一つと考えています。内視鏡検査は短時間で終了しますが、それより時間のかかる、例えば腰椎麻酔などの手術では限局的な無痛領域の確保のため何もしなければ意識は明瞭です。手術に対する不安もあり、手術中血圧が上昇したりするものです。鎮静剤を使用するとそのような不安から来される症状もなく、より楽で、かつ有効な手術が受けられます。
当クリニックでは手術の際は原則的に鎮静剤を使用し、内視鏡検査の際は希望に応じて鎮静剤を使用しています。
内視鏡はどのように洗われているかご存知ですか?
施設によってまちまちですが、当クリニックでは日本消化器内視鏡学会の推奨するガイドラインに沿って、洗浄・消毒・すすぎ・乾燥という一連の流れを行っています。
洗浄
洗浄とは、固体の表面から汚れを除去することです。洗浄には、化学成分の働きによる表面張力の低下や可溶化のほか、機械的(物理的)な作用があります。微生物の除去に非常に有効な補助的手段であり、器材は消毒処理の前に洗剤と温水によって洗浄します。
洗浄によって、バイオバーデン(微生物数)が減少し、消毒や滅菌に対して抵抗する物質(有機物、無機物)を除去できます。従って、便、血液、粘液で汚染されたものは、放置すると乾燥し、汚れが落ちにくくなるので、できるだけ早く洗浄します。
消毒
消毒とは、対象物から細菌芽胞を除く、多くのまたはすべての疾患の病原に関連した微生物を除去あるいは殺滅する処理方法であり、液体薬剤や湿熱を用いて行います。消毒の効果はさまざまな条件で異なってきます。消毒剤の種類、濃度、温度、浸漬時間、微生物の種類や汚染の度合い、被消毒物の洗浄の有無、被消毒物の形状(隙間、管腔のあるもの)、バイオフィルムの有無などです。
※バイオフィルムとは、医療器材に付着した細菌が液体に浸されると、菌体表面に糖タンパクを産生し、互いに凝集して膜状の菌塊を形成するもので、消毒剤に抵抗性を示します。
消毒剤
多量の細菌芽胞以外の微生物をすべて殺滅し、長時間使用で滅菌を成し遂げるものを言います。
これに用いられる過酢酸は、5分間の浸漬で、消毒が可能です。作用機序は、強力な酸化力により、蛋白の変性、代謝酵素の賦活化、細胞膜の破壊などにより殺菌します。
過酢酸は分解して、酢酸、過酸化水素、酸素、水になるので有害な物質を生じません。
当クリニックの内視鏡洗浄方法は、検査が終了すると、直ちに酵素剤液を200ml吸引、内視鏡外側をガーゼで拭きます。例えばこの過程を水道水で行った場合、汚れの度合いを潜血反応でみると、水道水では100%残存しますが、酵素剤液では50%に減少します。次に、酵素剤液に浸漬しながら、ブラシにて三箇所の管路、および操作部を洗い、外側を再びスポンジで洗います。付属品も同様に洗います。ここまでが予備洗浄で、この後、自動洗浄機にセットし本洗浄が始まります。自動洗浄機による洗浄・消毒・すすぎ・乾燥という工程を経て、次の患者さんに使用します。
小さい大腸ポリープはどこまで切除するか?
小さい(=5mm以下で線を引く意見が多いです)ポリープのがん化率は、非常に低く(しかしゼロではありません)、これを全て切除するのは少なからず存在するリスクの問題からも、医療費の問題からも行わないのが一般的です。最近、この問題に関して新たな論文がでました。主旨は「微小なポリープにがんの危険は、従来考えられていたよりずっと多い」というものです。
大腸ポリープは全て治療すべき
Laurie Barclay, MDMedscape Medical News 監修 Gary D. Vogin, MD 直径6mm未満の大腸ポリープでも好ましくない組織像を呈する場合があるため治療が必要であるとするレトロスペクティブ(後ろ向き)レビューの結果が米国結腸直腸外科学会(ASCRS)年次集会で発表されました。「ごく小さな大腸ポリープでも無視することはできない。この中の4.5%がハイリスクであり、1,000個中2個ががん性ポリープであったからである」と著者でありクリーブランド・クリニック・ファウンデーション(オハイオ州)で内視鏡検査責任者を務める大腸外科医James M. Church, MDはMedscapeに述べています。「進行した」腺腫や「危険な」腺腫という概念が1992年に最初に記載されたとき、専門家の一部では、小さな大腸腺腫は後の大腸がんリスクを増大するとは考えられていなかったので、経過観察も治療も必要としない、と考えられていました。このレトロスペクティブ(後ろ向き)レビュー調査では、1995年以来Church博士が大腸内視鏡で認めたポリープ5,722個の転帰を検討しました。その内訳は、直径6mm未満と定義したI群が4,381個(76.6%)、直径6mm以上10mmと定義したII群が666個(11.6%)、直径10mm超と定義したIII群が675個(11.8%)でした。浸潤がん24個のうち、2個がI群、1個がII群、21個がIII群でした。「ハイリスクの」腺腫とは、絨毛構造が25%以上を占めるもの、重度の異形成を伴うもの、または直径が10mmを超えるものと定義し、定義に従えば、III群の腺腫は全てハイリスクとなるのに対して、I群では2,064個中91個(4.4%)、II群では417個中65個(15.6%)がハイリスクの腺腫でした。III群の腺腫564個中326個(57.8%)は組織学的所見が好ましくないものでした。年齢、家族歴、ポリープの部位はいずれも、ハイリスクのポリープの割合に影響を及ぼしませんでした。「小さな大腸腺腫にもがんまたはハイリスクの上皮組織が潜んでいる可能性があることを本研究は示している」とChurch博士は述べています。「通常の大腸内視鏡検査でも4分の1が見落とされる。しかし、小さなポリープが発見された場合には、それらを取り除くべきである」という結論です。
当クリニックの考えは、がんリスクの点から直腸以外の全てでは大きさに関係なく、直腸では5mm以上のポリープに対し、組織の検査(生検)を施行し(小さなポリープは生検で取り切れる事も多いです)、病理診断の結果、追加切除が必要な場合は切除します。10mm弱以上の病変では、同日に切除します(巨大な病変など入院下切除が望ましい時は生検でとどめ他施設を紹介します)。